2007年10月1日月曜日

高齢の追憶(65)・再び掛軸

> なんだよ、ハナから高麗仙人が解釈すればよかっ
> たんじゃないか。

 ではアンコールいたしまして、第二幅をば…。

> 「読めなくても絵として見てくれればいい」
> とのたもうた。

 なるほど、猿が遊んでいるようにも見える文字を
 お書き(描き)になりましたなぁ。
 このお方、儲かっているの?

 ―・―・―・―・―・―・―・―・―・―

第二幅の句
漢詩には平仄(ヒョウソク)というものがある。
それは、起句・承句・結句の最後の一字に韻を含ま
せることで、転句だけは除外している。

(例)「-n」の平仄を含む、たいていの料理屋にあ
   る詩

  月落烏啼霜満天(ten)
  江楓漁火対愁眠(min)
  姑蘇城外寒山寺(ここは平仄を含まない)
  夜半鐘声到客船(sen)

  この詩の韻は「-en」であり、日本語での平仄は
  苦しいが、中国語で発音すればスンナリ「-en」
  で通るのだ。
  だから高校では漢文の老先生が、枯れた美声を
  張りあげてお手本を示してくれた。
  漢詩一つに50分もかけて生徒の脳みそにに刷り
  込んだのであった。

では問題に戻ろう。
漢詩の平仄(ヒョウソク)を考慮すれば、解読不能の
文字は「選」「辿」「還」「遷」「遍」……のよう
な文字で、いずれも発音語尾が「-en」となるべきで
あります。

  □□□□□遍(hen ken ten nen sen)
  □□□□□鮮(sen)
  □□□□□□(ここは平仄を含めないきまり)
  □□□□□泉(sen)

 解釈:南山ハ寿色ニシテ快綺遍(アマネ)ク
    南山全体は赤く染まり、織りなす綺(アヤ)
    が心地よい

アタリかな?
ハズレかな?
そんなことより、起句の意味さえわかれば後は各人
のセンスで鑑賞できるであろう。
あたしのお気に入りの部分は転句で、

 天地百年風月ヲ談ズ

だ。これはイイ。ビンビンくる。
天の月と地の風が、百年も情趣を話し合った結果が
眼前の景観なのだ。
風月ってのは情趣の代名詞でもあり、天と地の自然
をあらわす言葉でもある。
仙人にピッタリの語句ではないか。
和菓子の「風月堂」というのも大好きサ。

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